御書研鑚の集い 御書研鑽資料
持妙法華問答抄 第2章 二乗作仏は法華経のみ
【問うて云はく、已今当の中に法華経】
第4問 過去、現在、未来の「已今当」の三説の中で、法華経が
【勝れたりと云ふ事はさも候べし。但し有〔あ〕る人師〔にんし〕の云はく、】
最も優れていると言うことは、その通りでしょう。しかし、ある人師が、
【四十余年未顕真実と云ふは法華経にて仏になる声聞〔しょうもん〕の為なり。】
「四十余年未顕真実と言うのは、法華経に依って仏に成る声聞の為の言葉であり、
【爾前の得益の菩薩の為には未顕真実と云ふべからずと云ふ】
爾前の諸経で得益した菩薩の為には、未顕真実と言うべきではない」と言うのです。
【義をばいかゞ心得候べきや。】
この義をどのように心得るべきなのでしょうか。
【答へて云はく、法華経は二乗の為なり、菩薩の為にあらず、】
第4答 「法華経は、二乗の為に説かれた経文であり、菩薩の為の経文ではない。
【されば未顕真実と云ふ事二乗に限るべしと云ふは】
それ故に未顕真実と言うことは、二乗に限るべきである」と言うのは、
【徳一〔とくいち〕大師の義か。此は法相宗〔ほっそうしゅう〕の人なり。】
これは、法相宗の徳一大師〔とくいち・だいし〕の主張です。
【此の事を伝教大師破し給ふに「現在の麁食〔そじき〕者は】
このことを伝教大師が「現在の粗食者は、
【偽章〔ぎしょう〕数巻を作って法を謗じ人を謗ず、】
偽〔いつわ〕りの書物を数巻作って正法を謗り、人を謗っている。
【何ぞ地獄に堕〔だ〕せざらんや」と破し給ひしかば、】
それで、どうして地獄に堕ちずにいられようか」と破折されたので、
【徳一大師其の語に責められて舌八つにさ〔裂〕けてうせ給ひき。】
徳一は、この言葉に責められて舌が八つに裂けて、死んでいったのです。
【未顕真実とは二乗の為なりと云はゞ最も理〔ことわり〕を得たり。】
しかし「未顕真実」とは、二乗の為であると言うのは、最も道理を得ているのです。
【其の故は如来布教の元旨〔がんし〕は元より二乗の為なり。】
その故は、釈尊の布教の根元の趣旨は、もとより二乗の得道の為なのです。
【一代の化儀〔けぎ〕、三周の善巧〔ぜんぎょう〕、併〔しかしなが〕ら二乗を】
釈尊一代の化儀や三周の巧みな説法も、ことごとく二乗を
【正意とし給へり。されば華厳経には地獄の衆生は仏になるとも】
正意とされたのです。それ故に華厳経では、地獄の衆生は、仏に成っても
【二乗は仏になるべからずと嫌ひ、方等には高峰に】
二乗は、仏に成ることができないと否定し、方等経典には、高い峰〔みね〕に
【蓮〔はちす〕の生〔お〕ひざるように、二乗は仏の種をい〔焦〕りたりと】
水蓮が生じないように、二乗は、仏に成る為の種子を焦〔い〕った
【云はれ、般若には五逆罪の者は仏になるべし、】
衆生であると言われ、般若経には、五逆罪の者は、仏に成ることができるが、
【二乗は叶ふべからずと捨てらる。】
二乗は、成仏が叶〔かな〕わないと捨てられているのです。
【かゝるあさましき捨者〔すてもの〕の仏になるを以て如来の本意とし、】
このように憐れな捨てられた二乗が仏に成ることをもって、仏の本意とし、
【法華経の規模〔きも〕とす。之に依って天台云はく】
法華経の規模〔きぼ〕とするのです。それ故に天台大師は、摩訶止観・第六巻下に
【「華厳大品〔けごん・だいぼん〕も之を治すること能〔あた〕はず。】
「華厳経、大品般若経でも二乗を治すことはできない。
【唯法華のみ有って能〔よ〕く無学をして還〔かえ〕って善根を生じ】
ただ法華経のみが、すでに学ぶことが何もない二乗に善根を生じさせ、
【仏道を成ずることを得せしむ。所以〔ゆえ〕に妙と称す」と。】
仏道を成就させることができるのである。それ故に妙と称する。
【又「闡提〔せんだい〕は心有り、猶作仏すべし。】
また一闡提にも心があるので、やはり仏になることができる。
【二乗は智を滅す、心生ずべからず。】
しかし、二乗は、智慧を滅するので、菩提心を生ずることがない。
【法華能く治す、復〔また〕称して妙と為〔な〕す」云云。】
法華経は、よくそれを治す。故に妙と称する」と述べているのです。
【此の文の心は委〔くわ〕しく申すに及ばず。】
この文章の意味は、詳しく言うには及〔およ〕びません。
【誠に知んぬ、華厳・方等〔ほうどう〕・大品〔だいぼん〕等の】
まことに華厳経・方等経・大品般若経などの
【法薬〔ほうやく〕も、二乗の重病をばいやさず。又三悪道〔さんなくどう〕の】
法薬も、二乗の重病を癒〔いや〕さず、また三悪道の
【罪人をも菩薩ぞと爾前の経にはゆるせども、】
罪人も菩薩の一分であるとして、爾前の諸経では、成仏を許していますが、
【二乗をばゆるさず。之に依って妙楽大師は】
二乗の成仏を許さないのです。これに依って妙楽大師は、法華玄義釈籤・第二巻に
【「余趣〔よしゅ〕の実に会すること諸経に或は有れども】
「他の多くの衆生を仏道に会入させることは、諸経にも説かれているが、
【二乗は全く無し。故に菩薩に合して】
二乗については、まったく説かれていない。それ故に他の菩薩を引き合わせて、
【二乗に対し難きに従って説く」と釈し給へり。】
その二乗の作仏の難しさを示して法華経の力用を説いたのである」と釈しています。
【しかのみならず「二乗の作仏は一切衆生の成仏を顕はす」と】
そればかりでなく「二乗の作仏は、一切衆生の成仏を顕す」と
【天台は判じ給へり。修羅〔しゅら〕が大海を渡らんをば是難しとやせん。】
天台大師は、説明しています。修羅が大海を渡るのを難しいとするでしょうか。
【嬰児〔ようじ〕の力士を投げん、何ぞたやすしとせん。】
幼児が力士を投げることを、どうして容易〔たやす〕いなどと言えるでしょうか。
【然らば則ち仏性の種ある者は仏になるべしと爾前に説けども、】
そうであるならば、仏性の種子の有る者は、仏に成ると爾前経にも説きますが、
【未だ焦種〔しょうしゅ〕の者作仏すべしとは説かず。】
いまだ仏種を焦〔こ〕がしてしまった二乗が仏に成るとは、説かれておらず、
【かゝる重病をたやすくいや〔治〕すは、独り法華の良薬なり。】
このように重病である二乗をたやすく治すのは、独り法華の良薬だけであるのです。
【只〔ただ〕須〔すべから〕く汝仏にならんと思はゞ、】
ただ、あなたが仏に成ろうと思うのであれば、
【慢のはたほこ〔幢〕をたをし、忿〔いか〕りの杖をすてゝ】
慢心の旗を降ろして、瞋〔いか〕りの杖を捨てて、
【偏〔ひとえ〕に一乗に帰すべし。名聞名利は今生〔こんじょう〕のかざり、】
ひとえに一仏乗の法華経に帰依すべきであり、名聞名利は、今生だけの飾りであり、
【我慢偏執〔がまん・へんしゅう〕は後生のほだし〔紲〕なり。】
我慢や偏執は、後生の成仏への足かせでしかないのです。
【嗚呼〔ああ〕、恥づべし恥づべし、恐るべし恐るべし。】
まことに恥ずべきことであり、恐るべきことなのです。