御書研鑚の集い 御書研鑽資料
日興遺誡置文
【日興遺誡置文 元弘三年一月一三日】
日興遺誡置文 元弘3年1月13日
【夫〔それ〕以〔おもんみ〕れば末法弘通の慧日は、極悪謗法の闇を照らし、】
よく考えて見れば、末法弘通の日には、極悪・謗法の闇〔やみ〕を照らし、
【久遠寿量の妙風は伽耶始成〔がや・しじょう〕の権門を吹き払ふ。】
久遠・寿量の妙風は、伽耶始成〔がや・しじょう〕の権門を吹き払うのです。
【於戯〔ああ〕仏法に値〔あ〕ふこと希〔まれ〕にして、】
まさに仏法に会う事は、実に奇跡であって、
【喩〔たと〕へを曇華〔どんげ〕の萼〔はなぶさ〕に仮り類を】
たとえれば、千年に一度咲くという優曇華〔うどんげ〕の花に会い、
【浮木の穴に比せん、尚以て足〔た〕らざる者か。】
一眼の亀が大海で浮木の穴に入ることに、比べても、もっと難しいことなのです。
【爰〔ここ〕に我等宿縁深厚なるに依って幸ひに此の経に】
ここで、我等、宿縁・深厚であることに依って、幸いにも、この法華経に
【遇ひ奉ることを得〔う〕、随って後学の為に条目を筆端に染むる事、】
会うことを得て、よって後学の為に以下の項目を筆の先に染める事は、
【偏〔ひとえ〕に広宣流布の金言を仰がんが為なり。】
ひとえに広宣流布の金言を仰〔あお〕ぐ為なのです。
【一、富士の立義聊〔いささか〕も先師の御弘通に違せざる事。】
一、富士門流の立てた教義は、少しも日蓮大聖人が弘めた教えに違背しない事。
【一、五人の立義一々に先師の御弘通に】
一、日興上人以外の五老僧の立てた教義は、すべて日蓮大聖人の弘めた教えに
【違する事。】
違背しているとする事。
【一、御抄何〔いず〕れも偽書に擬〔ぎ〕し当門流を毀謗〔きぼう〕せん者】
一、御書をいずれも偽書〔ぎしょ〕と疑い、日興上人の宗門を誹謗する者が
【之有るべし、若し加様の悪侶出来せば親近〔しんごん〕すべからざる事。】
あるのです。もし、このような悪僧がいれば、近づかない事。
【一、偽書を造って御書と号し本迹一致の修行を致す者は】
一、偽書を造って御書と言い、本迹一致の修行を行う者は、
【師子身中の虫と心得〔う〕べき事。】
師子身中の虫と心得るべき事。
【一、謗法を呵責〔かしゃく〕せずして遊戯雑談〔ゆげ・ぞうだん〕の化儀並びに】
一、謗法を呵責〔かしゃく〕せずに、遊戯・雑談〔ゆげ・ぞうだん〕を行い、
【外書歌道を好むべからざる事。】
外道の書籍や歌舞音曲〔かぶおんぎょく〕を好まない事。
【一、檀那の社参物詣〔もの・もうで〕でを禁ずべし、】
一、信者の神社、仏閣への参詣を禁じるべきであり、
【何〔いか〕に況〔いわ〕んや其の器にして一見と称して謗法を致せる悪鬼乱入の】
まして知識をひろめる為の見学と称して、謗法である悪鬼乱入の
【寺社に詣づべけんや。返す返すも口惜〔くちお〕しき次第なり。】
寺や神社に参詣するのは、返す返すも悔しいことであり、
【是〔これ〕全く己義〔こぎ〕に非ず、経文御抄等に任す云云。】
これは、まったく己義〔こぎ〕ではなく、経文や御書に御教示されているのである。
【一、器用の弟子に於ては師匠の諸事。を許し閣〔さしお〕き、】
一、才能が有る弟子に於ては、師匠の僧侶の身の周りの仕事。をさせずに、
【御抄以下の諸聖教を教学すべき事。】
御書など日蓮大聖人の教えを教学するべきである事。
【一、学問未練〔みれん〕にして名聞名利の大衆は予が末流に叶ふべからざる事。】
一、学問が未熟であるのに名聞名利の人々は、日興上人の宗門にあらざる事。
【一、予〔よ〕が後代の徒衆等権実を弁へざるの間は、】
一、日興上人の次の時代の信者は、権教と実教の違いを知らない間は、
【父母師匠の恩を振り捨て出離証道〔しゅつり・しょうどう〕の為に】
父母や師匠の恩を振り捨て、欲望を離れ、仏道を成就させる為に
【本寺に詣で学文すべき事。】
本寺に参詣して修学するべき事。
【一、義道の落居〔らっこ〕無くして天台の学文すべからざる事。】
一、日蓮大聖人の仏道の理解なくして天台大師の教えを学ぶべきではない事。
【一、当門流に於ては御抄を心肝に染め極理〔ごくり〕を師伝して】
一、日興上人の宗門に於ては、御書を心に染め、極理〔ごくり〕を師伝して、
【若し間〔いとま〕有らば台家を聞くべき事。】
もし、時間が有れば、天台大師の教えを聞くべき事。
【一、論議講説等を好み自余を交ゆべからざる事。】
一、論議や講説などを好み、それ以外の事。を交〔まじ〕えてはならない事。
【一、未だ広宣流布せざる間は身命を捨てゝ随力弘通を致すべき事。】
一、未だ広宣流布していない間は、身命を捨てて、随力弘通するべき事。
【一、身軽法重の行者に於ては下劣の法師たりと雖も、】
一、身軽法重の行者には、身分が低い僧侶であっても、
【当如敬仏〔とうにょ・きょうぶつ〕の道理に任せて信敬を致すべき事。】
仏を敬うようにとの道理に任せて、信頼し尊敬するべき事。
【一、弘通の法師に於ては下輩たりと雖も、老僧の思ひを為すべき事。】
一、教えを弘める僧侶には、後輩であっても老僧のように振舞いを学ぶべき事。
【一、下劣の者たりと雖も、我より智勝れたる者をば仰いで師匠とすべき事。】
一、身分が低い者であっても、自分より智慧が優れているを仰いで師匠とすべき事。
【一、時の貫首〔かんず〕たりと雖も仏法に相違して己義を】
一、その時代の宗門の長といえども、仏法に相違して自分勝手な意見を
【構〔かま〕へば之を用ふべからざる事。】
主張するならば、その意見を用いない事。
【一、衆義たりと雖も、仏法に相違有らば】
一、多数の意見であっても、仏法と相違することがあるならば、
【貫首之を摧〔くじ〕くべき事。】
宗門の長は、これを止めさせる事。
【一、衣の墨、黒くすべからざる事。】
一、僧侶の法衣の墨の色を黒くしてはならない事。
【一、直綴〔じきとつ〕を著すべからざる事。】
一、法衣のひとつである直綴〔じきとつ〕を着てはならない事。
【一、謗法と同座すべからず、与同罪を恐るべき事。】
一、謗法の者と同座するべきでなく、与同罪を恐るべきである事。
【一、謗法の供養を請〔う〕くべからざる事。】
一、謗法の供養を受けてはならない事。
【一、刀杖等に於ては仏法守護の為に之を許す、但し出仕の時節は】
一、武器については、仏法を守護の為には、これを許すが、ただし、法事。の時は、
【帯すべからざるか。若し其れ大衆等に於ては之を許すべきかの事。】
これを携〔たずさ〕えず、しかし信者などには、これを許すこともある事。
【一、若輩〔じゃくはい〕たりと雖も高位の檀那より】
一、若い僧侶であっても、地位が高い信者より
【末座に居〔お〕くべからざる事。】
下座〔しもざ〕に座るべきではない事。
【一、先師の如く予が化儀も聖僧たるべし。】
一、日蓮大聖人のように日興上人の生活も聖僧であるべきである。
【但し時の貫首或は習学の仁に於ては、設〔たと〕ひ一旦の】
ただし、その時代の宗門の長、その弟子においては、たとえ、一旦は、
【媱犯〔ようはん〕有りと雖も、衆徒に差し置くべき事。】
女性に心を奪われるようなことがあっても、宗門にそのままにしておく事。
【一、巧於〔ぎょうお〕難問答の行者に於ては先師の如く】
一、巧みであり、難しい問答を行う者については、日蓮大聖人のように
【賞翫〔しょうがん〕すべき事。】
それを議論を歓び合い、有意義なものにするべきである事。
【右の条目大略此〔か〕くの如し、】
右の項目の概略は、このようなものであるが、
【万年救護の為に二十六箇条を置く。後代の学侶、】
万年救護の為に、この二十六箇条を定め置くのである。次の時代の学僧は、
【敢〔あ〕へて疑惑を生ずること勿〔なか〕れ。】
あえて、これに疑惑を生ずることなかれ。
【此の内一箇条に於ても犯す者は日興が末流に有るべからず。】
この中の一箇条でも犯す者は、日興の弟子ではない。
【仍〔よ〕って定むる所の条々件〔くだん〕の如し。】
よって定める所の項目は、この通りである。