御書研鑚の集い 御書研鑽資料
五人所破抄 第二章 大日蓮華山
【又五人一同に云はく、凡そ倭漢両朝の章疏を披〔ひら〕いて】
また、六老僧の内の五人一同の主張は「そもそも日本、中国の解釈書を開いて
【本迹二門の元意を探るに、判教は】
法華経の本門と迹門の究極の意を深く考えて見ると、教えの判教は
【其の文に尽き、弘通は残る所無し、】
法華玄義と法華文句に尽くされており、法華弘通に関して残されている所はない。
【何ぞ天台一宗の外に胸臆の異義を構へんや。】
どうして天台宗の教義の他に自分の胸中にある異流義を構える必要があるのか。
【拙〔つたな〕いかな尊高の台嶺を褊〔さみ〕して辺鄙〔へんぴ〕の富山を崇め、】
なんとつたないことであろうか、崇高な天台山を見下して、辺境の富士山を崇め、
【明静の止観を閣いて仮字の消息を執す。】
正確で誤りがない摩訶止観を差し置いて、先師の仮字文字の消息文に執着するのは、
【誠に是〔これ〕愚癡を一身に招き恥辱を先師に及ぼす者なり、】
まことに愚かさを我が身一身に招き、先師の恥を残し、未来に及ぼすものである。
【僻案の至りなり。甚だ以て然るべからず。】
それこそ、間違いの極みであり、決して、まともな弟子の在るべき姿ではない。
【若し聖人の製作と号し後代に伝へんと欲せば、】
もし、日蓮大聖人の御述作と称して、それを後世に伝えようとするならば、
【宜しく卑賎の倭言を改め漢字を用ゆべし云云。】
卑しい仮名文字を漢字に改めて、それを残すべきである」と述べています。
【日興が云はく、夫〔それ〕竜樹天親は即ち四依の大士、】
それに日興一人の主張は、そもそも竜樹や天親は、涅槃経にある四依の菩薩であって
【円頓〔えんどん〕一実の中道を申〔の〕ぶと雖も、而も権を以て面と為し】
円頓〔えんどん〕一実の中道を説いていると言っても、権教を表として
【実を隠して裏に用ゆ。天台伝教は】
実教は、隠して裏に用いたのです。また、天台大師、伝教大師は、大乗の菩薩の位の
【亦五品の行位にして】
中の六即の観行即であり、さらにその中の四信五品の内の五品の位であり、
【専ら本迹二門の不同を分かち、而も迹を弘め】
もっぱら、法華経の本門と迹門の区別を明確にしながらも、迹門を弘めて
【衆を救ひ本を残して末に譲りたまふ。】
衆生を救済し、法華経・本門は、残して、その弘通を未来の末法に譲ったのです。
【内鑑は然りと雖も外は時宜に適ふかの故に、】
内心では、それを知っては、いましたが、外に向かっては、時が来るのに待って、
【或は知らざるの相を示し、或は知って而も未だ闡揚〔せんよう〕せず。】
知らないふりを示し、あるいは、知っていても、明らかにしなかったのです。
【然るに今本迹両経共に天台の】
それにもかかわらず、今、日興以外の五老僧が本迹二門の教えを共に天台大師の
【弘通と称するの条、経文に違背し解釈は】
弘通であると主張している事は、法華経の経文にも違背し、天台大師などの解釈も
【拠〔よりどころ〕を失ふ。所以に宝塔】
根拠のないものとなってしまいます。なぜならば、法華経・見宝塔品で釈尊が
【三箇の鳳詔〔ほうしょう〕に驚き】
三箇の鳳詔〔ほうしょう〕により、滅後における法華経の弘通を命じたことに対し、
【勧持二万の勅答を挙げて、此等の弘経を申ぶと雖も】
法華経・勧持品で二万の菩薩が娑婆世界での弘経を誓ったが、
【迹化の菩薩に許さず。】
釈尊は、これを迹化の菩薩に許されなかったのです。法華経・湧出品に於いては、
【過八恒沙の競望を止めて】
他方から来集した八恒河沙を超す菩薩が競って娑婆世界の弘教を誓い望んだのです。
【不須汝等護持此経と示し、】
釈尊は、これに対し「あなた達が法華経を護持する事を用いず」との態度を示され、
【地涌千界の菩薩を召して如来一切所有の法を授く。】
そのときに地涌千界の菩薩を召し出されて、如来の一切の法を授けられたのです。
【迹化他方の極位すら】
迹化、他方の最高位の菩薩ですら、釈迦牟尼仏と地涌の菩薩との血縁が
【尚〔なお〕劫数塵点に暗し、止善男子の金言に】
五百塵点劫以来のことと知らずに「止〔や〕みね、善男子」の金言にあるように
【豈〔あに〕幽微の実本を許さんや。】
深遠なる実教の本門の弘通を、これら迹化、他方の菩薩に許す事があるでしょうか。
【本門五字の肝要は上行菩薩の付属なり、】
本門の肝心たる妙法蓮華経の五字は、上行菩薩の付嘱に決まっているのです。
【誰か胸臆なりと称せんや】
誰が、このことを心の内に秘めているなどと言うことができるでしょうか。
【(委細は文の如し経を開いて見るべし。)】
詳しくは、法華経の経文の通りであり、不審であれば、経文を開いて見るべきです。
【次に天台大師経文を消したまふに】
次に天台大師が法華経・湧出品の経文に次のように解釈されています。
【「如来之を止むるに凡そ三義有り。】
「釈迦如来が他方の菩薩を制止された理由は、ほぼ、三つの意義がある。
【汝等各々自ら己が任有り、若し此土に】
一つは、他方の菩薩には、それぞれに自らの本地があり、もし、この娑婆世界に
【住せば彼の利益を廃せん。】
移り住めば、現在の本地の衆生に対して、利益することができなくなるのである。
【又他方は此土に結縁の事浅し、】
二つには、他方の菩薩は、娑婆世界の衆生と血縁が薄い為、
【宣授せんと欲すと雖も必ず巨益無からん。】
それらに法を授けたいと思っても、大勢の人々を利益することはできないのである。
【又若し之を許さば則ち下を召すことを得ず、下若し来たらずんば】
三つには、他方の菩薩に弘通を許したならば、地涌の菩薩を召し出す事が出来ず、
【迹も破することを得ず、遠も顕はすことを得ず。】
法華経・迹門も破折する事ができず、五百塵点劫も顕わす事ができないからである。
【是を三義と為す。】
これを他方の菩薩を制止された理由の三義とするのである。
【如来之を止めて下方を召して来たらしむるに亦三義有り。】
釈尊が他方の菩薩を制止し、地涌の菩薩を召し出された理由に、また、三つがある。
【是我が弟子応に我が法を弘むべし。】
一つは、地涌の菩薩は、釈尊の久遠の弟子であるから釈尊の法を弘めるのである。
【縁深厚なるを以て】
二つには、地涌の菩薩は久遠以来、娑婆世界との宿縁が深く厚いので、
【能く此土に遍して益し、分身の土に】
よく、この娑婆世界の衆生を、あまねく利益し、また、分身の諸仏の国土の衆生も
【遍して益し、他方の土に遍して益し、】
あまねく利益し、他方の国土の衆生にも、あまねく利益することができるのである。
【又開近顕遠することを得。】
また、地涌の出現により、始成正覚の近を開いて、久遠実成の遠を顕す事ができる。
【是の故に彼を止めて下を召すなり」文。】
この三つの理由で、他方の菩薩を制止し、地涌の菩薩を召し出された」とあります。
【又云はく「爾時仏告上行の】
また、天台大師は、法華文句で「その時に仏、上行などの菩薩大衆に告げたまわく、
【下、是第三に結要付属す」云云。】
以下の部分が第三の結要付嘱〔けっちょう・ふぞく〕である」と述べられています。
【伝教大師は本門を慕ひて】
伝教大師は、本門流布の時を慕〔した〕って、守護国界章において
【「正像稍過ぎ巳〔お〕はって末法太だ近きに有り、】
「正法、像法、やや過ぎ終わって、末法、はなはだ近きに有り、
【法華一乗の機今正しく是其の時なり」文。】
法華一乗の機は、まさしく、これ、その時なり」と述べられています。
【又云はく「代を語れば則ち像の終はり末の初め、】
また、法華秀句には「時代を語ると像法の終わり、末法の初め、
【地を原ぬれば則ち唐の東、羯〔かつ〕の西、人を尋ぬれば則ち五濁の生、】
国を尋ねると中国の東、カムチャッカの西、人を論じると五濁悪世の衆生であり、
【闘諍の時、経に云はく猶多怨嫉】
闘諍堅固・白法隠没の時である。法華経・法師品には、なお怨嫉多し。
【況滅度後と、此の言良〔まこと〕に以〔ゆえ〕有るなり」云云。】
いわんや滅度の後をやとの言葉は、誠に深い意味がある」と述べられています。
【加之〔しかのみならず〕記の八に大論を引いて云はく】
さらに付け加えると、竜樹菩薩は、大智度論の中において
【「法華は是秘密なれば諸の菩薩に付す」と。】
「法華経は、秘密の経であるから、諸に適う菩薩に付嘱する」と述べられています。
【今の下文に下方を召すが如く】
法華経・涌出品の時に地面の下方の菩薩を召し出したということは、
【尚本眷属を待つ、】
明らかに本眷属である地涌の菩薩を待ったということなのです。
【験〔あき〕らけし余は未だ堪へざることを。】
それは、地涌の菩薩以外には、この法の付嘱に堪えられないからなのです。
【輔正記に云はく「付嘱を明かさば、】
唐の道暹〔どうせん〕の法華文句輔正記〔ふしょうき〕には「付嘱を明かさば、
【この経をば唯下方涌出の菩薩に付す、何を以ての故に爾る、】
この経は、ただ地涌の菩薩に付嘱するのである。なぜ、そうなるかというと、
【法是久成の法なるに由るが故に久成の人に付す」と。】
法自体が久遠実成の法である故に久遠実成の過去からの人に付嘱する」とあります。
【(論釈一に非ず繁きを恐れて之を略す。)】
これらについての論文や解釈は、一つでないので、繁雑を恐れ、これを省略します。
【観音薬王は既に迹化に居す、南岳天台誰人の】
観音菩薩や薬王菩薩は、迹化の菩薩であり、南岳大師、天台大師は、その中の誰が
【後身ぞや。正像過ぎて二千年、】
生まれ変わったのでしょうか。正法、像法時代が経過して二千年になりますが、
【未だ上行の出現を聞かず。】
いまだに上行菩薩の出現は、聞いておりません。
【末法も亦二百余廻なれば本門流布の時節なり、】
すでに末法に入って二百年が経過し、法華経・本門の流布の時代になっています。
【何ぞ一部の総釈を以て猥〔みだ〕りに】
どうして、天台大師の法華経・一部・八巻の全体の解釈を以て、
【三時の弘経を難ぜんや。】
正法、像法、末法の三時の弘経の方法を問題にしないのでしょうか。
【次に日本は総名なり、亦本朝を扶桑国と云ふ。】
次に日本と言うのは、総称であり、また、日本を扶桑〔ふそう〕国とも言います。
【富士とは郡の号、即ち大日蓮華山と称す。】
富士は、郡の名前であり、大日蓮華山〔だいにちれんげざん〕と称します。
【爰〔ここ〕に知んぬ、先師自然の名号と】
このことから、次のことを知ることができるでしょう。先師の自らの名乗りである
【妙法蓮華の経題と山州共に相応す、】
日蓮と言う名前と妙法蓮華の経題と大日蓮華山の名前が相応しているのです。
【弘通此の地に在るなり。】
このことから法華経の弘通は、富士山を起点にして起ることがわかるのです。
【遠く異朝の天台山を訪らへば台星の所居なり、】
遠く中国の天台山を訪ねれば、そこは、三台星の居住する地であり、
【大師彼の深洞を卜して迹門を建立す。】
天台大師は、中国、随、唐の時代に、その地を選び迹門の法華経を建立されました。
【近く我が国の大日山を尋ぬれば日天の居住なり、】
近くは、我が日本国の大日蓮華山をたずねれば、そこは、日天子の住む所であり、
【聖人此の高峰を撰んで本門を弘めんと欲す。】
日蓮大聖人は、この霊峰・富士山を選んで、本門を弘めようとされたのです。
【閻浮第一の富山なればなり。】
それは、世界一の美しさを誇る富士山だからなのです。
【五人争でか辺鄙と下さんや。】
それにも、かかわらず、六老僧の内の五人は、どうして辺境と見下すのでしょうか。