御書研鑚の集い 御書研鑽資料
五人所破抄 第四章 天目の邪義
【此の外〔ほか〕支流異義を構へ諂曲稍〔やや〕数多〔あまた〕なり。】
この五老僧の外の支流にも異義をとなえ、仏法を曲げる者がたくさんいるのです。
【其の中に天目の云はく、】
その中の天目が、このように言っています。
【已前の六人の談は皆以て嘲哢〔ちょうろう〕すべきの義なり。】
六老僧の説は、皆、嘲笑すべき教義である。
【但し富山宜〔よろ〕しと雖も亦過失有り。】
ただ、日興門流だけは、まだ、ましではあるが、やはり過〔あやま〕ちもある。
【迹門を破し乍〔なが〕ら方便品を読むこと既に自語相違なり、】
迹門を破折しながら、法華経・方便品を読む事は、まことに自語相違であり、
【信受すべきに足らず。若し所破の為と云はゞ弥陀経をも】
信じるに値しない。もし所破の為に読むと言うのであれば、阿弥陀経さえ
【誦すべけんや云云。】
破折の為に読まなければ、ならなくなるではないか。
【日興が云はく、聖人の炳誡〔へいかい〕の如くんば】
それに日興が主張するには、日蓮大聖人の明らかな戒めに基づけば、
【沙汰の限りに非ずと雖も、慢幢〔まんどう〕を倒さんが為に】
天目の主張など論じるまでもないが、天目の慢心を諫める為に、
【粗〔ほぼ〕一端を示さん。先づ本迹の相違は】
その一端を示しましょう。まず、法華経・本門と迹門の相違があることは、
【汝慥〔たし〕かに自発するや。去ぬる比〔ころ〕天目当所に来たって】
天目が初めに言い出したことでしょうか。正安二年の頃、天目が富士に来て、
【問答を遂ぐるの刻み、日興が立義一々証伏し畢んぬ。】
問答をした際に、本迹勝劣などの日興の立義に、一つ一つ、承服したはずです。
【若し正見を存せば尤も〔ききょう〕帰敬を成すべきの処に】
もし、正しい理解力があるならば、当然、日興に帰依し、恭順すべきであるのに、
【還って方便読誦の難を致す。誠に是無慚無愧〔むざん・むき〕の甚しきなり。】
逆に方便品の読誦を非難してくるとは、誠に恥知らずの極みではないでしょうか。
【夫〔それ〕狂言綺語の歌仙を取って自作に備ふる卿相〔きょうそう〕すら】
そもそも、言葉で遊ぶ歌道においてすら、昔の歌を自分の作品にみせかける事は、
【尚短才の恥辱〔ちじょく〕と為す、】
才能のなさを示す行為として、どんな身分の高い人であっても恥としたのです。
【況んや終窮究竟の本門を盗み己が徳と称する】
まして仏法の中でも、究極である本門の教えを盗み、自身の説であると称するのは、
【逆人争でか無間の大苦を免〔まぬか〕れんや。】
仏への反逆であり、どうして無間地獄の大苦を逃れる事ができるでしょうか。
【照覧冥に在り、慎まずんばあるべからず。】
神仏の照覧は、目に見えなくとも厳然とあり、だからこそ恐れ慎むべきなのです。
【次に方便品の疑難に至っては汝未だ法門の立破を弁へず、】
次に方便品、読誦の非難では、法門の立正・破折の意義を理解していないのです。
【恣〔ほしいまま〕に祖師の】
日蓮大聖人が正行である題目に方便、寿量を読誦の助行として加えられたことを
【添加を蔑如す。重科一に非ず、】
その道理も分からないで軽蔑しているのです。その重罪は、一つでは、ありません。
【罪業上の如し。】
罪悪の業は、先に述べた通りであり、無間地獄は、免〔まぬが〕れられないのです。
【若し知らんと欲せば以前の如く富山に詣で、】
もし、これらの道理を知りたいと願うならば、以前のように富士に来て、
【尤〔もっと〕も習学の為宮仕〔みやづか〕へを致すべきなり。】
習学の為に師匠のそばに仕えることです。
【抑〔そもそも〕彼等が為に教訓するに非ず、正見に任せて二義を立つ。】
そこで天目などへの教訓ではなく、正しい見解として二つを説明しましょう。
【一には所破の為、二には文証を借るなり。】
方便品の読誦については、一には、所破の為、二には、文を借りる為なのです。
【初めに所破の為とは純一無雑の序分には】
最初の所破の為とは、清浄な唯一無二の法華経の序分においては、
【且く権乗の得果を挙げ、廃迹顕本の】
爾前・権教によっても仏果を得る事ができることを挙げ、迹門を廃して本門を顕す
【寿量には猶伽耶の近情を明かす。】
寿量品においては、伽耶城の近くで初めて正覚を成じたことを明かしているのです。
【此を以て之を思ふに方便読誦は本意に非ざれば】
このことから考えてみると、方便品の読誦の根本の意味とは、
【只是牒破〔ちょうは〕の一段なり。】
これまでの教えに対する執着を破折する為なのです。
【若し所破の為と云はゞ念仏をも申すべきか等の】
それでは、所破の為と言うのであれば、阿弥陀経を読んでも良いというのは、
【愚難は誠に四重の興廃に迷ひ、未だ三時の弘経を知らず】
愚問であり、四重・興廃に迷い、正法、像法、末法の弘経を知らないからなのです。
【重畳〔ちょうじょう〕の狂難嗚呼〔おこ〕の至極なり。夫〔それ〕諸宗】
度重なる狂気じみた非難は、愚劣の極みであり、念仏など爾前・権教の諸宗の
【破失の基は天台伝教の助言にして】
破折は、天台大師、伝教大師の領分で、日蓮大聖人は、それを助けたのであり、
【全く先聖の正意に非ず、】
まったく日蓮大聖人の正意ではないのです。末法においては、像法時代の経である
【何ぞ所破の為に読まざるべけんや。経釈の明鏡既に】
迹門は、所破の為に読むのです。経文とその解釈書にある明鏡は、すでに
【日月の如し、天目の暗きは邪雲に覆はるゝ故なり。】
太陽と月のようであるが、天目が暗愚で、その眼が邪悪な雲に覆われているのです。
【次に迹の文証を借りて本の実相を顕はすなり。】
次に方便品を読誦するのは、迹門の文証を借りて、本門の実相を顕す為なのです。
【此等の深義は聖人の高意にして】
これらの深い意義は、日蓮大聖人の崇高な意思によるところであり、
【浅智の覃〔およ〕ぶ所に非ず、】
我々の浅はかな智慧では、とうてい及ぶところではないのです。
【正機には将に之を伝へんとす云云。】
正しく理解できる人には、この法門を伝えるべきであると言われています。
【嘉暦三戊辰年七月草案す 日順】
嘉暦三年7月に草案する 日順